■ Turquoise ■ 空の行方/S T A R T I N G L I N E
――空には果てがないんだ
君が言った言葉を繰り返してみる
雲のない空は どこか遠くて
そのくせ 落ちてきそうに近い
人は空を飛べるか
君と激しく言い争った朝
突然 君は問い掛けた
君が求めるものは
私が求めるものではなかった
ただ そんな単純なことでも
傷つき 迷った
私の空の行方を 君は知らない
果てのない空 それが君が望んだもの
私はただ 君の側に居たかった
雲のない視界に 飛行機は飛んでいった
■ Chocolate ■ ココア/C O C O A
ココアにマシュマロを浮かべる
白い雲がカップを覆って
きっと私の寂しさも 私の悲しみも
甘く覆い尽くしてくれる
さようならの言葉が出てくると
途端に重くなる受話器に
すがりつくようにしながら
貴方の最後の息遣いまで 聞きとろうとする
また明日ね
あなたの声は優しくて
マシュマロは甘いけれど
私の気持ちは
わざと砂糖を少なくした 苦いココア
■ Forest Green ■ 情景/S C E N E
変わらない笑顔と 変わらない言葉で
あなたが出て行く
日常と言う名の
美しい情景
変わらない台詞と 変わらない仕草で
あなたが存在しつづける
日常と言う名の
大切な情景
昨日 二人の間に流れた
小さな諍いも 乱暴な言葉も
日常に流されながら
いつの間にか 小さな苗木のように
あなたを思い出す 鍵になる
■ Rosy Brown ■ 桜謳/B A L L A D E
桜の色の想い出がある
幼い日々と
穢れなさと
残酷さを秘めて
桜の色の思い出がある
優しい笑みと
懐かしさと
悲しみを秘めて
桜の色の思い出がある
輝く君と
立ち止まる僕の
後悔を秘めて
桜の色に君を秘める
春雷に泣き散る姿に
■ Dark Sea Green ■ 嘆きの庭/T E A R S
そこに悲しみがあったと
私は誤解して
そこに苦しみがあったと
あなたが誤解した
月の見下ろす庭に
静かに梢の葉が陰を落として
その切っ先が震え いつしか影が延びるのを
膝を抱えて見つめている
私たちは愚かで
あまりに優しすぎた
夜明けは来るでしょうか
東の空は雲が厚く
帳の向こうにも まだ
夜が続いているように思う
そこに悲しみがあったと
私は嘆き
そこに苦しみがあったと
あなたが泣いている
そんな嘆きの庭の奥に
月の光が揺れる
■ Tomato ■ 朝焼け/M O T O R W A Y
東の向かって進む車の中で
私はただ目を閉じていた
エンジンの唸り声と
タイヤが鳴る音だけが聞こえた
イカロスのようだ
ただ 太陽を目指して
瞳を焼かれながら
墜落していく
制限速度を軽く越えて
太陽に飛び出す
無謀なほどの貴方の若さを
温度差に融けていってしまうような
小さな私と貴方の差異を
私だけが感じていた
■ Royal Blue ■ 道化/C L O W N
道化があなたの胸を刺す
あなたの胸の球体が破れて
溢れ出す 水
どうか 泣かないで
あなたの水に触れて
濡れた私の中指は
もう永遠に渇かない
道化があなたの胸を刺す
諦めに似たおどけた仕草で
溢れ出す あなたの雫に
その体を濡らしながら
■ Gold ■ さなぎ/C H R Y S A L I S
瞬間 稲穂の実りを感じた
未だ緑の揺れる大地に
風が渡っているとき
私は追憶に包まれて
蛹のように丸くなろう
時が行過ぎて
繭から頭を上げると
そこには 幸せがあるだろう
右と左で 二つの世界が揺れる
過去から得た 私の哀しみは
私の未来へと 河のように流れて
いつの間にかそれこそが世界だと
私を偽っていた
■ Black ■ 水葬/F U N E R A L
鼓膜を振るわせつづける 水の唸り声に
わたしは 足を止め 息を止めた
暗闇には 恐怖が凝っていて
誰かが 私の足を引き摺った
水に流されて 去っていった人たち
私の心や 記憶から
長く 悲しみと怒りの悲鳴を伸ばし
忘却の海に 流れていく人たち
私を 許すな