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 Green Yellow  一滴の夢/For You

 オミズガホシイノ
 そんな声を聞いた気がして
 私は
 小さな如雨露に水を入れ
 ポタポタと水を垂らす
 
 小さく揺れている葉が
 何かを掴もうとしているように見えて
 私は
 そっとその先端に触れ
 不意に 切なくなる
 
 無心に
 愛してほしいとか 傍に居てほしいとか
 笑ってほしいとか 怒らないでほしいとか
 そんなことを
 考えるのではなくて
 ただ 今 生きているということを
 その存在の有意義を
 確信したいだけなのに
 
 私は
 
 揺れる葉先に垣間見える孤独を
 受け止めきれず
 ただ 鳴らない電話を机に置いたまま
 如雨露で水を垂らす
 その水の一滴があの人の私への微笑みに
 変わっていくことを
 ただ 夢みて

 Thistle  雨音/So I need you

 ヘッドホンから聞こえてくる
 激しいビートに体を振りながら
 何故 私は 泣いているのだろう
 
 かつて 激しく降る雨の中で
 全身を射貫かれながら
 あなたを追いかけたいと思った
 そのときのように
 雨の音は私を叩いている
 
 降る雨は地球の引力に導かれ
 大地に抱きとめられ
 いつしか精製されて
 美しく儚いものへ変わっていく
 
 では この私の涙は
 何に導かれて
 何処へ流れていくのだろう

 Brown  思い出/N U K E G A R A

 何かに呼ばれた気がして振り向いた
 夏の午後
 遠くでうるさく鳴く蝉に ふと
 自分は一人ではないかと
 
 高い樹の梢
 圧し被さる入道雲
 蝉の声
 
     一瞬の静寂
 
 ポツンと
 幹に忘れられた茶色の抜け殻が
 不思議なほど瞼に残った
 
 あの夏の日に
 私ははじめて全身で兄を呼んだ

 Aqua  遠鳴/G R A N D P A

 自分の体がやっと乗りきる手漕ぎの舟に
 一枚の網と自分と麦藁帽子で
 魚を追った
 波の音と風の音と太陽の音
 懐かしむように あなたは窓の外を見た
 
 入道雲を見るとあの海を思い出す
 波の音と潮の香り
 魚を追って舟を漕いだ 若かった と
 たどたどしく こけた頬を輝かせて
 あなたは語った
 
 懐かしむ瞳を私の思い出に残して
 暑い夏の朝に あなたは
 遠い海鳴りの中に還っていった
 
 あなたの骨は真っ白で
 私は 最期の苦しみが嘘のような
 穏やかなあなたの顔を胸に
 ただ 入道雲を眺めていた

 Silver gray  終わりの夏/S A Y O N A R A

 夏蝉の掠れた音が響いて
 風鈴の響きが消える
 あなたの背中は優しいまま
 坂道を下っていく
 
    さよなら
 
 小さく投げた言葉が
 庭の木の枝を揺らして
 
       さよなら
 
 小さく返ってきた木霊に
 夏の終わりを知った

 Orange Red  麒麟/R A K U J I T U

 ゆらゆらと揺れながら去っていく
 幻ののような影を見送り
 落日の光に縁取られた
 暗いあなたの輪郭を思う
 
 一日が 一秒が 辛いですか
 
 ゆらゆらと揺れている長い影を
 踏まないように注意して
 私はあなたの背中を見つめています
 
 どうか 気付いてください
 それでもあなたの歩いている道は
 光の中にあるのです
 
 不安定に揺れるあなたの背の高い影に
 花を一輪投げました

 Midnight Blue  黒い雨/B L A C K R A I N

 不意に訪れた黒い雨は
 私の体を斑に染め
 いかに私が醜くて愚かなものであるのか
 周囲に叫んででもいるかのようだった
 
 私は世界が終わればいいと感じた
 世界が終わり
 美と醜の境すらなくなれば
 この雨に打たれ汚れた体もまた
 透明で美しい卵に
 孵ることでしょう
 
 黒い雨が降った
 私の体を斑に染め
 天からの鉄鎚のように

 Crimson  虚像/R E P L I C A

 ポツンと灯台のように灯った光は
 夏の星のように赤くて
 私は過ぎ去った時を思って
 膝を抱える

 体の奥が痛いほどに冷たいのは
 私の半分が空っぽで
 微笑む私も怒れる私も
 何かを象徴するレプリカだからですか

 伸ばした手に 雪

 もしも世界が終わっても
 きっと気が付かないに違いない
 この体の半分は
 あなたを追って消えたから

 せめて雪を詰め込んで
 私は膝を抱える
 しんしんと 降る雪の音
 橋の欄干に置き忘れられたレプリカ