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 医学生の謎
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これはある医学生の赤裸々な回顧録である――と思いマス。
 

デバガメ軍団の謎

 さて、ワタクシには当時、既に研修医になっている相方が居たことは、「仁侠の謎(2)」や「餅つく兎の謎」で出てまいりましたが、相方は麻酔科でございました。もちろん、病院実習が始まる前から、様々な生きるうえでの豆知識(○○科の教授は○○が超嫌い――とか、看護婦さんの○○さんは女の子に超厳しい――とか)を教えてもらっていましたし、実習が始まってからは、外科系の実習で手術室に入るたびに、廊下で会ったり患者さんの麻酔をかけていたりしましたから、それなりに会ってはおりました。何が楽しいって、相方が必死で患者さんの背中に針を刺しているのを、その背後から息を詰めてじぃぃぃぃっと見ているのが楽しいのです。そして、次に病院外で会ったときに相方の自己反省をシタリ顔で聞いてやるわけですな(笑)←根性悪
 そんなわけで、いつもはたまにしか顔をあわせていなかったのに、麻酔科の実習が始まってからは嫌でも毎日朝から顔を会わせることになったわけです。

 麻酔科の実習は主に麻酔の見学です。もちろん、見学中に麻酔担当医に質問攻めされたり、手が足りなくて棚から手袋を取り出したり、外科医の手術用ガウン装着のお手伝いをしたりもします。そこに心電図の見方や心肺蘇生の講義、心臓マッサージ&人工呼吸の手技練習、挿管練習人形「挿管くん」での挿管練習などが加わります。
 心肺蘇生手技練習は既に別の機会でもやっていますから、さほど驚いたりはしません。ですが「路上で倒れている人を見つけた場合」を想定しているので、でっかい声で「すいませーん! 誰か手伝ってくださーい!」と叫ばないと次のステップに行かせてもらえないのは、かなり恥ずかしいものです。

学生「あの……すいませ……」
Dr.「声が小さい、やり直し! ちゃんと、動作つけて」
学生「あのー! すいません!(手はメガホンの形で叫ぶ)」
Dr.「そう、叫んで。はい、一人来てくれました、次のステップ!」

 ――教室で、周囲を同じグループの面子に囲まれて、患者さんの人形の肩を叩きながら、「大丈夫ですか! 大丈夫ですか! 聞こえますか! 返事できますか!」とか、迫真の演技をするのは、やっぱり恥ずかしいです。ハイ。
 ――そして、何人にも口付けされる人形の口はアルコール綿で消毒されているので、気をつけないと人工呼吸で酔います(笑)

 麻酔科実習の締めくくりとして「先生と一緒に麻酔をかけてみましょう大作戦」が行われます。一緒に麻酔を行う――というより、見学するだけでなく、麻酔記録をつけたり、お薬を注射器に吸い上げたりします。まぁ、お手伝いをすると言ったほうが正しいでしょうか。
 学生は麻酔科医とペアになって一人の患者さんを受け持ちます。手術の種類によっては長かったり短かったりします。この組み合わせは学生がお手伝いできそうな患者さん一覧に対して、学生は学籍番号順にくっつけられますから、どんなペアになるかは偶然の産物です。
 ワタクシは嫌な予感がしておりました。そして、ワタクシの嫌な予感は大抵当たるのです。大作戦発動の日、ワタクシが見た学生担当の麻酔医の名前は――相方でした……;

 ワタクシは冷静な顔をしておりました。相方も冷静な顔をしておりました。
 相方には、ワタクシより番号がひとつ若い友人Aもついておりましたから、まずは、ワタクシは友人Aのサポートにまわっておりました。それでも、友人A担当の午前中は静かに過ぎていたと申せましょう。
 そして、午後、ワタクシの番になる直前のことでございました。ワタクシは相方と二人で、麻酔器の準備をしながら、患者さんを待っておりました。

Dr.A「準備はできた?」
 私「はい」

 Dr.Aはにっこり笑って帰っていかれました。

Dr.B「もうすぐだね」
 私「はい」

 Dr.Bはにやつきながら帰っていかれました。

Dr.C「………(ニヤリ)」
 私「……;」

 次々と現れては消える麻酔科医――。あんたらの魂胆は読めたゾ;
 そう、彼等はどこからか情報を仕入れて面白がりにいらっしゃっていたのでございます; ご丁寧に一人ずつ、既に面識のある研修医の方々以外、全員……;

 ――まぁ、医者もただの人間、好奇心には勝てないわけです。