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 医学生の謎
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これはある医学生の赤裸々な回顧録である――と思いマス。
 

笑いの殿堂の謎

 小学校以来、さまざまな健康診断を受けてきていますけれども、その中でも私が好きではなかったのは耳鼻科の――というより、鼻の健康診断でございました。器具を鼻の中に入れられ、くにゅっと広げられるときのあの感触が何とも言えず、さほど高くない鼻が更に横に広げられて低くなったような気がしていたからでございます。
 その後、滲出性中耳炎を患ったりしたおかげで、なんとなく一般的な内容を知った状態で実習がスタートしたのでございます。
 さて、耳鼻科の実習の前の夜に女子学生としてはしておかなくてはならないことがございます。(男子学生もしたい人はした方がいいでしょう)前日の夜、ワタクシがしたことというのは、耳掃除と鼻掃除です(笑) だって、学生同士で耳と鼻の覗くんですもの; いくら、睡眠不足で肌がボロボロだろうと、化粧をする暇がなかろうと、大口開けて寝ているところを見られようと、耳の中と鼻の中が汚いとは言われたくない乙女心なのでございます。
 そんなわけで、耳鼻科の実習は、手術の見学、受け持ち患者さんの診察&レポート、外来見学以外に、学生同士での診察実習があるのです。

 耳鼻科で最近多く治療されているもの――鼻がむずむずして鼻水が出て、くしゃみが出て涙が出るもの――というと、花粉症でしょう。耳鼻科では花粉症のアレルギーについて調べることがあります。花粉症が何の花粉で起こるかを知っておいて、減感作療法を行ったりするんですね。(今は、粘膜をレーザーで焼くという治療法もありますが、昔は減感作が多かったんじゃないでしょうか。実は私もしました)
 もちろん、ワタクシ達もやってみました。
 むんずと相手の腕を掴んで、アレルギー物質を皮膚に注射します。アレルギーがなければなんともありませんが、あると、しばらく経ってから赤くなり痒くなります。(私はハウスダストと杉で赤くなりました。ハウスダストは昔、減感作療法を3年ほど受けてるんですが、やっぱりこういう注射では出るんですよね)
 全員、花粉症だったらしく、腕をポリポリかきながら診察台に上がり、鼻と耳を覗かれます。

 鼻は真ん中で仕切られておりますが、真っ直ぐに仕切られているというわけではありません。結構斜めだったり歪んでいたりするのです。友人Aは右より。友人Bは左より。そしてワタクシ。

 Dr.「あー、比較的真っ直ぐだね。ほらほら、これが真っ直ぐ」
友人A「あ、ホントだ」
友人B「マジ? あ、マジだ」
  私「……」(←そんなに鼻の穴を覗き込まんでくれ; これでも乙女なんだ――と思っている)

 そして耳。なるべく奥まで見るように――というのが、実習の使命でございます。友人Aの耳を覗き込んでいたとき。

 Dr.「あ、これ見て、これ」
  私「あれ、なにかある。耳垢――じゃないような気が……」
 Dr.「耳垢がねぇ、こういう風になったりもするんだよ〜」
友人A「……」(←たぶん、そんなに耳の穴を覗き込まんでくれ、と思っている)

 そして、極めつけ、花粉エキスの染み込んだろ紙を鼻の奥に入れて、花粉症の誘発実験(もちろん、花粉症がひどいと分かっている人はたいへんなので実行は自由――でも、面白そうなので結局全員やるのです<学生は祭り好きと相場が決まっております)

 まず、一番症状が軽そうなワタクシ。鼻の奥がむずむずするけれど、特に異変なし。もともとアレルギーの症状が皮膚に出やすくて鼻や目にはあまり出ないタイプなので、大丈夫だったようです(ちなみに、皮膚の注射では一番ひどい症状が出ていました)
 次に、友人B。鼻にろ紙を置くと、3秒後からくしゃみが発生。慌ててろ紙を取ろうとして直に指を突っ込んだ姿を見られてしまい、その状態で一瞬凍りつく友人B……。
 そして、もっとも花粉症の症状が重い友人Aは、やらなくていいというのを押し切っての参戦。

 Dr.「ろ紙、入れたよ」
友人A「あれ、なんともな……」

 「い」を言う前に、くしゃみ発生。5連発。
 鼻の中のろ紙を鼻息で吹き飛ばしながらの豪快な技に、面白そうに見るとはなしに見ていた他の患者さんまで大爆笑。診察室を笑いの渦見巻き込んだ友人Aは、くしゃみをしながら笑うという大技を繰り出し、診察室は笑いの殿堂となりました。

 何のことはない、ただの遊びのようにも思える実習ですが、実際には、くっきりと記憶の中に焼きつく、立派な実習なのでございます。