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 医学生の謎
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これはある医学生の赤裸々な回顧録である――と思いマス。
 

お子様たちの謎

 大半の同級女子医学生たちが目を輝かせて待っているもの――それは小児科の実習でございます。なかには大変な病気を抱えている子もいるので不謹慎かもしれませんが、やっぱり、お子様たちはとってもとっても可愛らしいのです。しかも、日常の退屈な病院の中で知らない人が関わってくるわけなので、お子様たちにしても興味津々、しかも、子供好きで一緒に遊んであげちゃったりなんてしますと、もう、もてもてです。可愛らしい子供が、目を輝かせて「遊んで」とおねだりしてくれる。子供好きにとっては、実習の時間なんて朝から晩まででオッケーよ、お勉強するする――という気持ちになります。だって、凶悪なほどに可愛いのですもの。
 小児科という分野は内科と似ていますが、子供に多い病気、子供がかかると大変な病気もありますし、同じ病気でも大人以上に注意しなくてはならない病気もありますから、勉強自体は大変です。しかも、その大変さを良く分かっている小児科の先生たちは、厳しく学生を教育なさいます。けれども、その大変さは全部、お子様たちの可愛い笑顔に紛れて消えてなくなります。笑顔ってすごいですね。笑顔って大事です。

 さて、小児科の分野は内科と同じで広いので、グループのメンバーは分割され、一人ずつ違う先生にくっついてお勉強します。もちろん、全分野の勉強はしなくてはなりませんから、週に3回、全員が集まって先生のお話を聞かせていただきます。日常の診療のことから、最先端の研究の内容まで、それはもう、子供のあやし方から遺伝子のお話までと多岐にわたりますから、聞いているだけでも大変です。大変ですが、先生のお話はしっかり勉強せいよという親心ですから、ワタクシドモは顔で笑って心で泣くわけですね。
 外来の実習では最初の問診をさせていただいて、世のお母さま方がどれだけお子さんの病気を心配なさっているかも分かります。これは、かなり緊張します。なんといいますか、行動の全てを注意深く見られているような感じで; しかも、実際の問診カルテに記載し、それを担当研修医の先生に見ていただいて、ここはもう少し突っ込んで内容を問診した方がいい――とか、この項目はあまり重要じゃないので必要なし――とか、実践的なことも教えていただくので、緊張は二乗です。
 病棟では、患者さんを担当させていただいて、問診をしたりします。私の場合は10代の男の子でしたから、本人にじっくり話を聞かせてもらうことができますが、赤ちゃんが相手だと、ご両親が看病にいらっしゃっているときにお話を聞かなくてはならないので、けっこう大変です。――でも、赤ちゃんは天使の微笑みなんですよ〜(>_<)

 場合によっては手術の見学をしなくてはならないこともあります。例えば、心臓の先天奇形のお子様の場合、手術日が実習中であれば当然ですし、自習が終了し既に別の科の実習になっていても、その時に時間があいていれば手術の見学に行くこともあります。実習は2週間ですが、その2週間の間は主治医の先生と一緒に「医師の卵」として担当させていただいたわけですから、感覚としては「私の最初の患者さん」に近いものがあるのです。
 私の場合は、担当の患者さんが血液疾患で、患者さんの弟さんからの骨髄移植を受けることになっており、その弟さんの骨髄採取が実習中にありましたから、もちろん、見学させていただきました。同じグループの友人Aは、心臓の患者さんだったので、手術に立ち会っていました。(骨髄採取に関しては小児科の先生が手術室で行いますが、心臓の手術は心臓外科医が行います。手術が始まる前に連絡を入れておかなくても、実習中の学生が手術の見学をするのは自由です)
 また、自分の患者さんとは全然関係なくても、あまり見ることのできない事例については、先生の方から自由意志で見学にくるように、とお知らせがあります。私たちの時は、超低体重出生児の帝王切開がありました。エコーでの推定体重は約800グラム(普通は3000グラム前後)。母体の稀な病気のために、胎児が大きくなれなかったのです。
 800グラムなんて、想像できますか? 大きなペットボトルよりも軽いんです。一言でいえば、ものすごーくちっちゃいです。(全然、説明になっとりませんがな;)
 手術自体は普通の帝王切開ですが、赤ちゃんが小さいこともあり、手術室の中に赤ちゃん用の機材も運び込まれ、赤ちゃんの呼吸を確実に確保するための赤ちゃん用の挿管チューブなども用意されています。もちろん、小児科の先生もその場でスタンバッていますし、小児科実習の学生と産科実習の学生が入り乱れていますから、大人数です。大盛況です。
 そんな中、その赤ちゃんは誕生しました。小さいけれど、ものすごく大きな産声を上げる、メチャメチャ元気な赤ちゃんで、一同、一安心で笑顔。
 小児科の実習は、笑顔で始まり、笑顔で終わっていくのです。

 笑顔ってすごいですね。笑顔って大事です。