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 医学生の謎
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これはある医学生の赤裸々な回顧録である――と思いマス。
 

歯医者さん?の謎

 医学生の謎なのに「歯医者さん」何故? という感じですが、実は、ワタクシが学んだ大学には歯科口腔外科学講座がありました。聞き覚えのない単語ですが、外科の歯医者さんという感じ――と言えば分かりやすいかもしれません。虫歯の治療ももちろんしているんですが、普通に開業していらっしゃる歯医者さんとはちょっと違って、ものすごーく大変な親知らずを手術で抜いたりとか、歯茎の辺りにできた悪いものをとったりとか、そういうことをします。
 医学部生は歯医者さんになるわけではないので、必要ないように思う方もいるかもしれませんが、同じように人間の体を治療する立場で、しかも歯や口の中に関連する病気も色々ありますし、知っておいて損はないのです。でも、すごく深い内容まで必要なわけではないので、実習はちょっと短めの1週間となっておりました。

 実習の大半は見学です。
 ななめに生えた親知らずを(渾身の力でもって)抜く現場の見学。←痛そう。
 激しく痛む虫歯をかかえた(泣き叫ぶ)子供(を羽交い絞めにする勢いで押さえつけて)の治療。←痛そう。
 歯茎にできた膿の袋を切除するための診察に来たお婆さん(に優しい微笑を振りまきながら治療してくださる、美人女助教授の美しい足首)の見学。←………(^^;
 もちろん、手術の見学もありますし、CTなどの撮影の見学もあります。

 当時の歯科口腔外科学講座の中には、出身県が同じで数回飲みに行ったことがある先生がいらっしゃいまして、他の先生が実習を担当しているときは真面目にする必要があったんですが、その先生が担当のときはこれといって真面目ぶる必要もなかったのでございます。

歯科医「(私を見つけて)おう、来たか」
  私「どぉもぉ……(もみ手)」
歯科医「……;お前さ、一応、実習なんだけど;」
  私「えへ」

 歯科口腔外科学講座の実習は、外病院実習の当直実習と組み合わさっておりました。半分が歯科口腔外科学講座の実習をしている時に、もう半分が当直実習を行うのです。けれども、当直実習は夕方から。――ということは、頑張れば歯科口腔外科学講座と当直実習をダブルでこなして、残りの1週間を丸々有意義に使えるのでございます。
 もちろん、ワタクシたちもそうしておりました。毎夜、急患が運び込まれると大変なんですが、それはまぁ、若さに任せて乗り切ろうという作戦だったのです。
 そして、その先生の実習は、まさしく当直明け、睡眠不足の真っ只中のことだったのでございます。

歯科医「なんだ、元気ないなぁ」
  私「――というわけで、当直明けなんですぅ」←もう、この語尾に私の願いがあふれ出ている。
歯科医「そうかぁ、俺も明け方まで飲んでたんだよなぁ」
  私「……そうなんですか(^^;」
歯科医「寝るか」
  私「は?」

 こうして貴重な1週間の実習のうちの1/10を睡眠で費やすことになったのでございます。

 そして、そろそろ実習が終わろうかという時期に、とある暴力団の抗争での発砲事件のニュースが流れました。「へぇ、銃撃戦。へぇ、両方とも被弾したのね〜。あぁ、でも、同じ病院に入院したら大変ね〜」――というのがワタクシの最初の感想でした。
 その時はまだ、知らなかったのです。まさか、当直実習の朝、帰り際にすれ違った車に乗っていたのが暴力団『甲』の被弾者で、その後、歯科口腔外科で診察の見学をさせていただいくのが暴力団『乙』の被弾者だなんて;

 カシっと、一人の先生がレントゲンの画像をシャーカッセン(レントゲン写真とかを見るときの光る壁のこと)に掛けると、おもむろに教授がちらりと学生を眺め、問いが飛びます。

教授「これ(なんだか白いものが映っている)なんだかわかる?」
 私「……た、弾……?」

 そして、大挙して個室(警察官が常駐して監視しなくてはならないので、その人は一般の病棟には入院していなかった)に押しかけると、被弾者を診察。診察されている本人はものすごく嫌そうなんだけれど、なにせ、口の辺りにいろいろ器具とかチューブとかつけてあってほとんどしゃべれないので、拒否もできない状態。ただ、ものすごく嫌そうな顔で学生を睨む。

教授「学生。滅多に見れないから良く見ておくように」

 教授って、オットコまえ;
 でも、ベッド上で睨みすえていることしかできない彼が、どうしても可哀想で仕方がなかった、歯科口腔外科の実習でございました。