準備中の謎
さて、基礎医学が終了しますと、今度は臨床医学でございます。
机の上で行われるお勉強と並行して、実験や実習があった基礎医学は、あっちに行ったりこっちに行ったりと、けっこう忙しかったのですが、講義が中心となる臨床医学(もちろん、臨床医学の後には病院実習――いわゆるポリクリがあるわけですが)では、毎日学友と顔つき合わせてお勉強に励むわけでございます。
――というわけなので、臨床医学の授業内容は、ここでお話するような面白いこと(面白い話をする場所だったんですか!?/笑)はなーんにもございません。もちろん、教科書と参考書を積み上げると腰の高さ以上になるんじゃないかというような内容をお勉強するわけですから、苦労は耐えませんし、追試に次ぐ追試(涙)があったりとか、レポートに次ぐレポートがあったりは致しますが、昨今の大学なんてモノは、学部が違っても同じような状況でしょうし、大学ならずとも、専門学校や時には高校でさえもそうなんじゃないかと思うので――。学生の皆さん、お疲れさま(涙)
さてさて、臨床医学と並行しまして、病院実習の準備として、内科診断学というものを学びます。
病気については授業で学びますが、患者さんが診察室に入ってきたらまずどうすればいいか、とか、聴診器の使い方(たまに間違っていて音が聞こえない事態に陥る慌てものの学生が居る)とか、打診の仕方(これが実にスナップが重要なのだ)などを学ぶわけです。
学生同士でペアになりまして、片方が患者さんになって、診察の練習なんかもします。本人たちは非常に真面目なんですが、傍から見ると、かなりの確率で「おままごと」なのが初々しいです。
その内科診断学の集大成とも言うべきものが、「内科診断学実習」でしょう。これは、小さなグループになりまして、内科や外科の先生に実地でトレーニングしていただくもので、担当の先生の趣味でいろんなことが行われます。
実際に患者さんに「学生さんの勉強に協力してください」と言って診察させてもらうグループもあれば、とうとうとその先生の診察理論を聞かせていただくグループもあり、憐れな事に、担当の先生が死ぬほど忙しかったがゆえに仕事の手伝い(ほとんど事務作業)で終わってしまった(涙)グループもありました。
そんななか、ワタクシは初っ端から激しい事態に巻き込まれたのでございます。
まず、初日は外科の先生が担当だったのですが、「手術中だから、手術室に来て」と連絡がございました。当時のグループの様子はというと、手術室ってドコ?(涙)←みな健康なので病院とは縁がなかった;
捜しました、行きました。そして、愕然とします。
手術中ってことは手術室の中まで入れってことだよね;
手術室に入るためには、手術用の服に着替えます。ですが、どこが更衣室かも分からない憐れな子羊たちにそんなことが可能なのでしょうか(涙)
もちろん、先生はそんなことは予測済みでした。迎えを寄越してくださったのです(感涙)
なんとか着替えて行った先は、ヘルニアの手術中でした。とりあえず、邪魔にならないように見てて――と言われて、素直に遠巻きにします。――が、見えるのはドクター達の背中ばかり(涙) 見えるくらいに近付こうとしても、看護婦さんの鉄壁の守り(清潔と不潔の考え方が出来ていない、やっと着替えが出来ただけの不慣れな学生なんか、看護婦さんにとってはゴキブリに等しい存在です/涙)にはばまれて、けして前に進むことは出来ません。
そうしているうちに、手術は終わりました。やっと講義が受けられる、そう思った瞬間、先生の口からは
「僕、これから外来だから、外来に来てね」
とりあえず白衣に着替えて、ダッシュで外来に行きます。(しかも、捜しまくって、外来中をうろつきます/笑)もちろん、先生はまだいらしていませんが、こういうときには遅刻をしないことが、実習の第一条件です。
ようやく、ようやく講義です。何をするんでしょう、ドキドキ。
先生「あ、これから直腸診するから、君たちもやってね」
学生「……(チョクチョウシン!?)」
先生「大丈夫、フォローアップ中の患者さんで、診察には慣れていらっしゃるから」
学生「……は はい…」
先生「変に恥かしがると失礼だよ」
チョクチョウシン……。はい。つまり、直腸を指で診察するわけです。
グループ内で、静かな戦いが始まります。いかに他人の後に隠れるか、心の準備が出来るまで順番を後回しにするか、トップバッターを誰になすりつけるか(^^;
先生は直腸診に必要な道具を揃えて、ゆっくりと歩み寄ってこれらます。その時です。
ドシン! 押しやがったな、テメェ!(涙)
ポンと手の平の上に一セットを置かれて、わたくしがトップバッターに選ばれたのでございました。
先生に色々と教えていただきながら、なんとか診察を終え、協力してくださった患者さんに深く頭を下げると、その方は笑って(なんて良い人だT-T)頑張ってねと言ってくださいました。
ここでトップバッターに選ばれたためか、その後も何故か直腸診とは非常に相性が良かった(何故かそういう患者さんが多かった)私でございました。
誤解のないように言っておきますが、直腸診はとても大切な診察の一つです。
様々な疾患の際に診察が行われます。「イヤダー、ハズカシー」という気持ちとか「クツジョク>_<」という気持ちも十二分に分かります(うちの父も言ってました^^;)が、必要だからやってるわけで、ご了承ください。