オンライン小説サークル[Jewel Box]
オンライン・小説同人サークル。
月一度の更新に合わせ、メンバーそれぞれが作品を寄稿し、かつその感想を書く。感想を書くことが義務づけられているのが特徴のひとつ。
ジャンルはフリーだが成年指定、エッセイ、パロディは不可。完全なオリジナル作品に限られる。月に一回寄稿の正会員と、寄稿は自由の準会員という、二種類の会員区分がある。
2001年初冬、解散により、一部内容を改変。
ラブラブ100%
このコンテンツの一番最初に自らが参加していたサークルを持ってくることには、実際ちょっとだけ抵抗があったりしたのだが、自画自賛的な部分を抹消してみてもやはり、このサークル――サークルそれ自体というよりも、このサークルが継続し存在しつづけ
ていたという事実自体が、とても素晴らしいことだと思えるので、最初の犠牲者になっていただいた。(←偉そう…^^;)
このサークルの成立は1998年夏。成立から既に3年以上の月日が流れ、2001年初冬、解散となった。私が誘いを受けて参加させていただいたのが第3号発刊時なので、私自身、
丸3年以上、このサークルにお世話になっていたことになる。
2年以上続いているサークルなんて、世の中にはたくさんあるよ――と思われる方は多いだろうが、寄稿規定が穏やかであることが多い(特にオンラインでのサークルはその傾向が顕著だ)中で、この[Jewel
Box]の規定は異色だと思う。正会員は必ず月一作以上の寄稿、他会員の寄稿した作品についての感想(少なくとも200字以上の内容のあるもの、質のよい感想を目指す)提出義務。準会員については寄稿は任意だが、感想は必須で、しかも準会員の連載は完結したものを一括投稿する場合しか認めない。
やってやれないことはない。事実、私もなんとかこなしている。だが、かなりシビアな規定であることは間違いない。内輪で囁く[Jewel
Box]の形容詞は「体育会系」「硬派」「ハード」「ストイック」……根性と向上精神に富んでいて、かつ打たれ強い性格を作り上げることができるサークルである。(いや、別に性格改善サークルではないのだが;)
そんなサークルなので当然メンバーが三桁になることなんてない。いや、もしもあったらそれだけの作品について感想を書かねばならないので、なってもらっては困る。もちろん、メンバーの顔ぶれが一気に変わってしまう時期だってある。忙しい時期は誰だって忙しいものなのだ。
私自身、何度か「卒業」を考えたりもしたのだが、タイミング良く(逆かな/笑)他のメンバーが「卒業」していったりすることが多くて、根がチキンな私は「乗り切れない波じゃないぜ」とばかりに乗りこなしてきたものだ。(追憶)
私はいくつかのサークルを経験してきた。情熱的に何かのサークルを立ち上げるとき、大事なものはメンバー間に温度差が出来ないようにすることなのではないかと思う。冷めた人間の中で情熱を燃やすと空回りしてしまうし、情熱に燃えた人間の中で冷めていると弾かれる。[Jewel
Box]にいて、一番楽しいと感じるのは、このシビアな規定をこなしていくだけの情熱を持った人物の傍に居ることができることではないかと思ったりもする。自分と同じような温度を持った人物が居るという事実を得るという自体が楽しいし、幸せなんである。そして、ついでにメンバーのなかなか興味深い創作なども読めたりするので、もうしばらく、時間が許す限り入り浸っていようと思っていたり
した。そして、解散のその日まで、結局のところ参加していたりした(笑)
サークルの思い出を胸にオススメ作品の書評を書かせていただく。
≡Angel Beat (1998.12〜1999.2) 秋月玲
――原稿用紙280枚に及ぶ青春バンド小説。
私の兄はギター小僧だった。中学で洋楽のエレキギターに出会った彼は瞬く間に夢中になり、CDを買い、ダビングし、スコアを買った。当然、父と大喧嘩をしてギターを奪取したり、夢中になりすぎて成績を暴落させたりもした。別に私の兄だけでなく、皆、そんな思い出があるのではないだろうか。対象は音楽だったり、小説だったり、スポーツだったり様々であろうけれど。
この「Angel
Beat」の中に感じるのは、そういう自分が夢中になった時期の温度感だ。既にその温度を復活させるには私は少し大人になりすぎているが、それでも、全てをかなぐり捨てて夢中になった時期を懐かしく思い出す瞬間はある。その作品の良さは、そんな全ての人が持っているだろう青春のワンシーンを上手に切り取って掌の上に何気なくひょいと乗せてくれるところだと思う。
軸にバンド仲間の友情と周囲の暖かな眼差しを置き、主人公でヴォーカルの少年の恋が少年らしい一途さと純情さと誠実さで語られていく。それは恐らく、誰もが自分自身や周囲で一度は体験したことだろうと思う。
女性としての視点でこの話を読むと、多少ヒロインの心情の移り変わりに不満をおぼえたりもするのだが、そんなものはパッションで打ち消していけるだけの勢いと熱がある作品だ。
この話の続編を考えていたりもするということなので、少し大人になった彼らの、大人になったなりの悩みや「Angel
Beat」では語られなかった他のメンバーのエピソードなどが綴られていくことだろうと思う。それが楽しみで仕方がないのが、今の私なのだ。
≡まるで呪文のように (1999.6.) しんそうじ
――多少ブラックな要素もある原稿用紙30枚のSF短編。
はっきり断言してしまうと、私はこの話が全てのオンライン小説の中で一番好きだ。一番面白いとは言わない。これは読者を楽しませるためだけに存在している小説ではないと思っているからだ。
私はショートショートに属するような、ストーリーそのものに対する着眼と捻りが必要な小説を読むことが好きだ。たぶん、その他の小説に対するものより基準自体も甘いと思う。それは自分自身にけして書けないという事が分っているからで、憧れと羨望をもって眺めてしまうせいなのだろう。
私の中で、しんそうじ氏の短編はある意味「別格」である。もちろん、作品にはバラツキがあるし、時にナンセンスさが強すぎる灰汁のように感じることもあるが、それでもその文章の中にある特有の視点、発想の個性は私を魅了して止まない。そして何より、ブラックな風合いの作品の中にある、「人間ってちっぽけで愚かで醜いけれども、そのあまりにも人間的な部分のなんと愛しいものか」とでも言いたげな視線を感じるのだ。ブラックさを狙うあまりに内容が非人間的になる作品は多い。だが、私はブラックだからこそ、そこに人間的な愛の視線が必要なのではないかと思う。
そして、ともすれば突飛過ぎるかもしれない発想を巧くセーブし、ある程度の現実感と説得力をもって文章を綴るのはとても、技量の要ることだと感じている。
しんそうじ氏は小説以外にオンライン作品の感想のページも運営していらっしゃるけれども、その感想の中にある視線もまた、非常に的確で明確なのである。センスなんだろうなと感じる瞬間である。